月島雑記帳

考えたことをまとめる場所

精神科医:樺沢紫苑先生の「ストレスフリー超大全」の講演・書籍の感想

イントロダクション

私はこれまでに何度か、脳天に雷が落ちたような経験をしたことがある。

 

経済評論家である中野剛志先生の日本刀の如き言論を見たとき。

西郷南洲翁遺訓に遺された西郷隆盛の偉大な教えを学んだとき。

ヴィリエ・ド・リラダン伯爵の「未来のイブ」を読んだとき。

アドラー心理学における「目的論」などの思考法を知ったとき。

 

私の心臓を激しく鼓動させ、脳漿を一瞬で滾らせ、または血の気の引くような戦慄をあたえたこれらの経験は、臓腑の奥底まで入りこんだかと思うと、あたかも徐放性の薬剤のように私の思想に影響を与え、世界を変え、人格を形成してきた。

 

 

ところで、私にとって樺沢紫苑先生の言葉は、上記のような、衝撃とか、天啓とか、奇跡とか、変革などといった類のものではなかった。

 

日常の、平素の、普段の、毎日の、生活を整えること。

人間が心身ともに健やかに生きるために取り組むべきこと。

愛情をもって草花に手入れをするように自分を大切にすること。

 

つまり、樺沢先生は「実生活」についての話をしているのである。

 

人間は鷹のように飛ぶこともできなければ、鱶のように泳ぐこともできない。

 

人間らしく、歩き続けること。

日が昇るころに起床し、月が輝くころに就寝すること。

日常の生活を、地味に、愚直に、しかし前向きに営むこと。

 

要するに、樺沢先生の言葉は、神の言葉ではなく、父の言葉なのであった。

 

 

さて、これから樺沢紫苑先生の「ストレスフリー超大全」の講演・書籍の感想に入ろうと思ったのだが、ひとつ大変困ったことに気が付いた。

 

というのは、私は今年に入ってから樺沢先生のYoutubeを見始め、生活習慣を大きく見直したことにより、今現在、私のストレスはほとんど全くといっていいほど無くなってしまっているということである。

(樺沢先生は、ストレスフリー超大全の出版記念講演会のなかで、「ストレスを0~10のどれかで手を挙げて下さい」と挙手をもとめられていたが、私「0かな?あっても1くらいだろうな」など思いながら動画を視聴していたものである。)

 

つまり、樺沢先生はこの本を「ストレスで思い悩んでいる人」を対象に書かれたはずだが、すでにほとんどストレスがフリーな状態の人間が読んでしまったということになる。

 

そのために、この感想文の本質としては、「今現在ストレスで悩んでいる人間がストレスフリー超大全読んだときの感想」ではなく、「すでに樺沢先生の教えを実行し、ストレスをフリーにした人間がストレスフリー超大全を読んだときの感想」になることをあらかじめお断りしておかねばなるまい。

 

それでは、これから「ストレスフリー超大全」の具体的な感想に入っていこう

 

 

 

 ストレスフリー超大全の感想

まず初めに、この本の構成を紹介したい。

 

序章 すべてのベースとなる「解決法」

1章 他人ではなく「自分」を変える

2章 「仲間」と「家族」が活力となる。

3章 「天職」を求め、「やらされ仕事」から抜け出す

4章 「疲れない体」を手に入れる

5章 心を整え、「新しい自分」にアップデートする

終章 精神科医がたどり着いた「とっておきの考え方」

 

 

さて、この本の要諦はどこかというと、間違いなく「序章」である。

たかが「序章」とあなどるなかれ。私の個人的な感想を言ってしまうなら、重要度でいえば8割以上がこの「序章」に詰まっている。

 

なぜなら、2章以降については、十人十色の悩みごとに対するテクニカルな解決法が提示されているのに対し、序章にはそれらの悩みの本体に関わる「不安感を取り除く方法」や「セロトニンを活性化させる方法」などが記載されているためである。

 

樺沢先生は、ストレスを①自己成長につながる良いストレスと②次の日に持ち越してしまう悪いストレスに分け、②の悪いストレスを溜め込まないためにレジリエンス(回復力)を高めていくことが重要であると説いている。

このレジリエンスを高めるため最も有効な手段が、「序章」部分に記されているのである。

 

従って、読者は2章以降のテクニカルな技術だけを学んで良しとするのではなく、この序章の教えを実際に実行し、自らのレジリエンスを高める必要がある。

そうでなければ、私たちは日常生活のなかで何かトラブルが起こるたびにストレスを溜め込んでしまい、決壊寸前になってテクニカルな技術で一時的に応急処置をするという、後手の対応に追われることになるだろう。

 

繰り返しになるが、まずは序章を忠実に実行してレジリエンスを高め、その上で2章以降を活用することが本書の正しい使い方である。

 

 このことを確認したうえで、この記事ではレジリエンスを高めるために効果的な「序章」の部分に焦点を当て、以下に愚見を述べさせていただこうと思う。

 

 

HSPにおすすめの3つの方法

では、それほど重要だという「序章」には一体何が書かれているのか。

 

私はHSP的な気質があることを公言してブログを書いているため、HSP的な気質をもった読者が多いことと思われる。

そのため、この記事では「序章」のなかで、HSP気質の私自身に特に効果があったものについて、3つに絞って紹介したいと思う。

 

私がHSPとして特にお勧めしたいものは、以下の3つである。

①朝散歩をすること

②運動をすること

③自分の感情を文章化すること

順々に説明していこう。

 

 

①朝散歩をすることについて

巷で幸せホルモンと呼ばれている「セロトニン」という神経伝達物質がある。

 

樺沢先生はセロトニンについて学ぶことができる本として、有田秀穂先生の「脳からストレスを消す技術」を紹介されている。

セロトニン研究の第一人者である有田秀穂先生が書かれたこの本には、セロトニン神経はそれ自体が何か仕事をするわけではなく、神経伝達物質の指揮者のような役割を担っていると書かれている。

つまり、セロトニン神経がオーケストラの指揮者のような役割をし、ドーパミン神経やノルアドレナリン神経の過興奮を抑え、脳全体のバランスを整えることで、「平常心をもたらす」のである。(有田秀穂先生著、「脳からストレスを消す技術」P98~99より)

 

ドーパミンの過興奮は「依存症」、ノルアドレナリンの過興奮は「不安障害」など原因となり得る。これらの過興奮を抑えることで、平常心をもたらすことができるということは、誠に理にかなっている。

 

実際に、「心の風邪」と呼ばれるうつ病の患者は、セロトニン神経の機能低下がみられることがわかっている。

ストレスを受けることによって、ストレス中枢である視床下部・室傍核という脳の部位が刺激され、セロトニンの分泌そのものが阻害され、セロトニン神経の機能が低下してしまうのだ。

うつ病の治療によく用いられるものに、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)というものがあるが、これにはセロトニンの働きを増強させる作用がある。

 

ところで、朝散歩をすることによって、セロトニン神経を活性化できることがわかっている。

 

樺沢先生によると、セロトニンは「朝日を浴びる」「リズム運動」「咀嚼」によって活性化するが、朝の散歩は「朝日を浴びる」と「リズム運動」の2つを兼ねているため、セロトニンが十分に活性化するということである。

 

わたしが思うに、HSP気質の人には「繊細であるがゆえのストレス」というものがあり、非HSPの人と比べてストレスを感じ取りやすい傾向にあると思う。

 

結果、人に会うことや外出することが億劫になり、家にいる時間が長くなってしまう。そして、朝日を浴びる機会が減り、セロトニン神経が弱ってしまうという負の連鎖があるのではないだろうか。

 

しかし、朝日を浴びながら散歩をするだけであれば、人と会う必要など全くない。

私たちは誰に気兼ねすることなく、思う存分朝散歩をすることができるのだ。

一人気ままに並木道の木漏れ日を浴びながら歩いたり、海岸沿を潮風を浴びながら歩くのは清々しい気持ちになるし、夏の空の青さから元気をもらうのもいいだろう。

 

私たちは、小鳥たちが日の出を待ち望むように、ただただ朝日を受け入れればよいのである。

 

 

②運動をすること

樺沢先生はご自身も週5日ほど運動を実践されている(有酸素運動だけでなく、加圧トレーニングや古武術など様々なものを取り入れていらっしゃる)ほどの運動愛好家だが、それは運動の「計り知れない効果」をよくご存じだからである。

 

運動のすさまじい効果について書かれた本として、樺沢先生は「脳を鍛えるには運動しかない!(ジョンJ.レイティ、エリック・ヘイガーマン著)」を紹介されている。

 

私はこの本も読んでみたのだが、前述したセロトニンも何度か登場する。

セロトニンは幸せホルモンと呼ばれるだけあって、心理学や精神科医のなかでもちょっとした人気者のようで、いろんな本にちょいちょい出てくる。レイティ博士はこの本では、「われらが友、セロトニン」などと紹介していた。レイティ博士によると、セロトニンは前述した指揮者のような役割を果たすことから、「脳の警察官」と表現されることもあるらしい。)

 

運動について書かれた本の中に、セロトニンが出てくるということは、もうおわかりだろう。運動がストレスや不安、うつ病といったものに、非常に有効であるということだ。

 

具体的には、運動をすることによって、血中遊離トリプトファンが増加し、BBB(血液脳関門)を通り抜けてセロトニンの構成材料になることや、BDNFと呼ばれる栄養因子が分泌されてセロトニンを増やすことなどがわかってきている。また、セロトニンの大敵であるストレスホルモンを低下させることもわかっている。

 

うつ病においては、運動は薬物療法と同程度かそれ以上の治療効果があることが、幾つかの研究で明らかになっており、レイティ博士は「運動がカプセルに入っていたら、その脳への効果はトップ記事になるだろうに」とウィットに富んだ表現をしている。

 

「脳を鍛えるには運動しかない!」は350ページほどあって、上述した効果以外にも、「頭をよくする」や「モチベーションが上がる」など、運動の計り知れない効果が数々のエビデンスとともにこれでもかというほど記されており、文章自体は読みにくいものではものの、一読するにはそれなりに時間がかかる。

 

樺沢先生の「ストレスフリー超大全」では、「脳を鍛えるには運動しかない!」の内容を、「運動の効果」とざっくりと一覧表にまとめられているため、結論だけ知りたい人にはこれだけでも貴重な資料になるだろう。(もっとも、「脳を鍛えるには運動しかない!」の究極的な結論は「運動すれば万事解決!」ということに尽きるのだが。)

 

 HSP的な視点で運動を考えるならば、誰かと一緒に走ったりすると「自分が遅いからペースを落としてしまわせたかな」などと気を遣う人もいるかも知れないし、気が向いたときにでも、1人の時間を大切にしながら、自然の中を無理のないペースで走るのもよいだろう。

 

また、①の朝散歩をすることと関連するが、朝日を浴びながらジョギングするのも気持ちが良いし、走り慣れていない人が突然ジョギングなんかをすると故障の原因にもなり得るため、まずは朝散歩を習慣にすることから始めるのも、負担がなくてよいかも知れない。重要なことは、無理をしないことだ。

 

 

 ③自分の感情を文章化すること

自分の感情についてあるがままを認識し、紙に書きだすことで頭の中を整理し、悩みを明確化すること。

 

これはHSPの方に私が本当におすすめする方法である。

 

私は日記という習慣をもう何年も続けているから、この絶大な効果については太鼓判を押したいと思う。

なぜ日記を書くことが良いのかについて、脳科学的な機序がどうなっているのかを私は知らないが、心理学でいうところの「ツァイガルニック効果」というもののおかげかも知れないと考えている。

 

この「ツァイガルニック効果」というのは、一言でいうと「一件落着した出来事は忘れやすい。継続案件は忘れにくい」というものだ。

ノートに書いてしまうことで脳が整理され、外部の状況はなにも変わっていないとしても、自分の内面で一件落着したように感じ、すっきりしてそれ以降あまり考えなくなるためではないだろうか。

 

また、今年に入ってからは、樺沢先生が提唱する「3行いいこと日記」を実践しているが、これもポジティブな効果を挙げているように思う。

 

「3行いいこと日記」とは、その日あったポジティブなことを寝る直前に3つ思い出すことで、脳が勝手にポジティブなことを探す構造に変わっていくというものだ。

 

私は「3行いいこと日記」を続けることで、次第に「良いこと」を探す習慣が身に付いた。始めたばかりの頃は「良いこと」を見つけるのに苦労したが、近頃は「良いこと」を探すことが苦にならなくなった。

 

脳は「良いこと」を探しながら「不愉快なこと」を考えることはできない。

次第に憂鬱なことを考える時間も減っていった。

 

私がHSPに特におすすめしたいのは、Twitterで「良いこと」を呟いてみることだ。

Twitterに、その瞬間に感じた「良いこと」を書き込む。ツイートは蓄積されるため、今日はどんな「良いこと」があったかなとあとで見返すことができる。

何か落ち込むようなことがあったときにツイートを振り返れば、こんなにもたくさんの「良いこと」があるという事実に気付き、人生に希望を持つことが出来る。

 

自分が呟いた「良いこと」に、自分に近いひとたちが「いいね」と言ってくれる。共感の喜びが生まれる。

私などは、今度はどんな「良いこと」をTwitterで呟こうかなと考え、Twitterに呟くために良いことを探し始めているほどである。

 繊細な感受性で何気ない喜びを感じ取り、他者と喜びを共感すること。

HSPにとってTwitterはものすごい可能性を秘めたツールになり得るのでないかと感じているところである。(興味を持たれた方、是非フォローしてください!:@CE3dmI6AY2oG8N6

 

 

最後に

さて、これまで「ストレスフリー超大全」の書籍について書いてきたが、最後に「ストレスフリー超大全の出版記念講演会」を動画視聴した感想を述べたいと思う。

 

樺沢先生はかつて精神科の臨床医として勤務されていたときに、自殺未遂の患者を救うだけでなく、自殺に至る前段階での阻止ができないかとお考えになられ、自殺を「予防する」ための活動に取り組むに至ったとのことだった。

 

樺沢先生はこれまで書籍だけでなくTwitterFacebookYouTubeにメルマガと実に様々なメディアで情報発信をされているが、今回の「ストレスフリー超大全」の執筆にあたっては、新しい試みを意識して取り組まれたそうである。

 

それは、近年では「エビデンス・ベースド・メディスン」と呼ばれる<科学的根拠に基づく医療>が中心的な考え方であるが、ストレスフリー超大全においては、「ナラティブ・ベースド・メディスン」と呼ばれる<物語に基づく医療>に基づいて執筆をした項目を多く取り入れたとのこと。

 

 この本の中には、先生がこれまで様々な媒体で情報発信されてきた中で、読者から「効果があった」という声の多かったものを積極的に採用したとのことである。

 

今回の新型コロナの対応もそうだが、人間は完全な情報、科学的根拠に基づいて意思決定できることばかりではない。むしろ、限られた情報、十分な根拠がない中で、与えられた情報と知恵を総動員して判断を迫られることも少なくないだろう。

 

脳科学においても状況は同じで、科学というもの自体が「現在のところそうだと考えられている」といったものに過ぎない。絶対的な真理、未来永劫変わらぬ不変の証明といったものは非常に困難が伴うのだ。

 

樺沢先生は今この世界を生きている多くの人たちが「効果があった」と話した声を積極的に採用された。

その声は、データとしてみたときには「N数」として片付けられてしまうものかも知れないが、一人ひとりの人間を見ていくならば、凄まじいうつ病との闘病記であったり、不安を抱えながらも歩き続ける人間の足掻き、言い換えるならば「生の探求」に他ならない。

 

今回の記事にあたっては、HSP気質があり毎日を憂鬱な気持ちで過ごしていた私が、平穏な毎日を送るために取り組んできたものの中で、特に「大きな効果があった」と実感したものを、私なりの「ナラティブ」としてHSP向けのメッセージとして紹介させてもらったものである。少しでもお役に立てれば幸甚である。

 

なお、今回の書籍紹介にあたっては、序章に絞って紹介させてもらったものの、2章以降の膨大な項目についてはほとんど触れてこなかった。

ここまでこの記事を読まれて興味を持たれた方は、実際に書籍を手に取って読んでみるのもいいだろう。私の記事を入口に樺沢先生の事を知り、憂鬱な気持ちが少しでも改善してもらえたならば、こんなに幸せなことはない。

 

私がお勧めしたいのは、まだ樺沢先生のYoutubeを見たことがない人があれば、Youtubeと併用することである。Youtubeを視聴することによって、書籍だけではわからない樺沢先生の人となりを、もっと身近に感じることができるだろう。

 

最後に、樺沢先生はYoutubeに動画を1500本以上投稿されているが、その中ではたまに紫色の髪の毛をした樺沢先生によく似た方が登場されることがある。

私はその方の動画が好きで、よく見直しては元気をもらっている。下にリンクを張っておくため、興味のある読者はぜひ視聴してもらいたい。

https://www.youtube.com/watch?v=M9nMyB2sywI

 

 

ご清覧ありがとうございました。

 

 

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

このブログではHSP的な繊細気質を持つ私が、日常のちょっとした幸せやHSPならではの読書感想、読んでいてポジティブになれるような記事を発信しています!

「面白かった」「ためになった」「心が楽になった」という方はいいねボタン、コメント、読者登録等よろしくお願い致します!

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------