月島雑記帳

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HSPが「反応しない練習(草薙 龍瞬著)」に反応してみる。

 

 

 

「生きることには<苦しみ>が伴う。

 苦しみには<原因>がある。

 苦しみは<取り除く>ことができる。

 苦しみを取り除く<方法>がある」

 

本の袖に書かれた4行の詩から「反応しない練習」は始まります。

この4行の詩は仏教の世界で四聖諦(ししょうたい、四つの真理の意)と呼ばれているそうです。

取り除くことができる苦しみに私たちがとらわれ続けているのだとしたら、私たちは苦しみを取り除く術を知らないか、またはそれを実践できていないことになりましょう。

 

では、そもそも<苦しみ>とはなんなのでしょうか。

 

仏教の世界では、「苦しみの原因は<執着>にある」とよく語られるそうですが、草薙先生は人間の苦しみは執着よりももっと根源的なところ、すなわち<心の反応>によって起こるのだと説きます。

 ・イヤなことがあって、つい腹を立てる。

 ・思い通りにいかない現実に焦ってしまう。

 ・他人の目を感じて「何か悪いことをしてしまったのかも」と不安になってしまう。

 

これらはすべて、ある出来事によって生じた<心の反応>であり、心の反応の結果、以下のような苦しみが生まれてしまうとのこと。

 ・ついカッとなって人間関係を壊してしまう。

 ・大事な場面で緊張して、能力を出せずに失敗してしまう。

 ・忌まわしい過去をつい思い出して、苦い後悔に沈んでしまう。

 ・つい考えすぎて、「自分はダメな人間だ」と落ち込んでしまう。

 

 

私たちを幸福にも豊かにもできるはずの心の反応が、一方では人生のトラブルや悩みを巻き起こしている。この事実に注目して書かれたのが本書「反応しない練習」なのです。

著者はいいます。『反応こそが悩みの正体です。―となると、私たちが日々心掛けなければいけないことは、一つです。「ムダな反応をしない」ことです。』

 

 

 「言っていることはわかるけど、言うは易し行うは難しだよ。それが出来れば最初から苦労してないし…。それに、苦しいことがあったから、苦しいと感じた。それが正しい理解じゃないかな。」

こう思われた方、もしよければもう少しだけお付き合いください。

 

私は自分にHSP的な気質があることを公言してブログを書いていますので、恐らく私のブログにいらっしゃる方は、繊細で感受性が強い方が多いと思います。

「繊細な私は、どうしても反応してしまう。普通の人より不利な状況にある。反応しない練習なんかやっても、繊細な私には難しい」と思う方もいらっしゃるかも知れません。

(私自身、某サイトのHSPの診断テストでは強度のHSPとの診断でした。繊細な感受性だからこそ、いろいろなことに気付き、考えてしまい、その結果心が余計に反応してしまい、疲弊してしまう気持ちもよくわかります)

 

しかし、草薙先生の方法を幾つか実践し始めてから、私の幸福度(心の平穏な時間)は間違いなく増加しています。強度のHSPと診断がでている私にも効果があるということなのです。

 

草薙先生の<反応しない練習>を実践したからと言って、突然私たちのHSP的な気質が雲散霧消して、毎週コンサート会場(人ごみの中)に行きたくなったり、突然暴力的な映像が好きになったり、カフェインに強くなったりするような変化は起こらないと思います。

しかし、不安な気持ちでいる時間を少なくし、HSPの特性を活かした「深く物事を考える」「喜びを感じ取る」時間を増やしていくことは十分に可能だと思います。

 

前置きが長くなりましたが、ここから苦しみを解消する具体的な方法についての説明に移ります。

 

筆者は「反応せずに、理解すること」、これが悩みを解決する秘訣であると説きます。「心の状態を見る」という習慣をもつことで、日ごろのストレスや怒り、落ち込みや心配などのムダな反応を抑えることが可能になるというのです。

では、「心の状態を見る」ためには具体的にどういうことをすればよいのでしょう。

筆者は、心のムダな反応を鎮める絶大な効果を持っている方法として3つの方法を紹介していますが、私自身が実践し、効果を実感している2つを紹介したいと思います。

①言葉で確認する。

②感覚を意識する。

 これから、順々に見てまいりましょう。

 

 

①言葉で確認する

言葉で確認するとは、たとえば苦手な人の前で緊張してしまったときに、「わたしは緊張している」と心の中で言葉にして確認することです。

(近頃はみんなマスクをしているでしょうから、小さく口を動かして唱えるのもありかも知れません)

 

仏教の世界では言葉で確認することを「ラベリング(ラベル貼り)」と呼ぶそうです。

「動揺しているな」「イライラしているな」「気力が落ちているな」など、自分の心の状態について、あたかも値下げシールを張る17時のスーパーの店員のごとくに、次々とラベリングをしていくことが重要だというわけです。

私はもう何年も日記をつけています。自分の心の動きを言葉で確認することで、自己洞察力が高まり、自分の思いを客観視できるようになりました。

日記でしたら、SNSに公表するわけではありませんし、誰に見られる心配もないため、自分自身に向き合って正直な自分の気持ちを綴ることができます。

しかし、私が日記をつけるのは基本的に寝る前が多く、日常的にラベリングを行うことが出来ていたかといえば、そうではありませんでした。

 

「あぁ、私は動揺しているようだな。」

「あぁ、私は緊張しているようだな。」

このように、常にラベリングをする習慣を身に着けることで、自分の主観から切り離し、一歩引いた場所から心の状態を観察することができるというわけです。

 

さて、言葉で確認するときに重要なことは、判断をしないことです。なぜなら、判断とは主観そのものであり、<心の反応>に他ならないからです。

言い換えるならば、あるがままをあるがままとして受け入れること。そこに、良いも悪いも判断する必要はありません。

「私は動揺をしている」→「私はなんて心の弱いダメな人間なんだ」というのは、すなわち判断であり、<心の反応>です。

人間の心とはそのようなものだと理解し、あるがままをあるがままとして受け入れること、判断をしないことこそが重要なのだと筆者は説きます。

 

 

 ②感覚を意識する。

目を閉じて息を吸うをすると、空気が気道を通り、腹部が膨張するのがわかります。また、息を吐くと腹部がしぼんでいき、鼻を通って空気が出ていくのがわかります。

同じように目を閉じて腕を動かすと、腕の筋肉を動かしている感覚を実感することができます。

 

①の言葉で確認をすることと、②の感覚を意識することは、ブッダが生きていたころはサティ(sati)と呼ばれ、瞑想の世界では「マインドフルネス」と呼ばれているそうです。

(私はマインドフルネスという言葉の方がしっくりくるため、マインドフルネスという言葉を使用します)

 

私は心が反応しそうになったときに、マインドフルネスを実行します。具体的には、仕事中に心が動揺しているなと感じたときには、「私の心が動揺している」とラベリングをし、呼吸に意識を向け、深呼吸を繰り返し行います。

 

私が特におすすめするのは、散歩の際にマインドフルネスを実行することです。

HSP的な繊細な視点で世界を感じ取ることができれば、空の美しさや、鈴虫の鳴き声、珍しい花を愛でるだけで、自然から元気を受け取ることができるでしょう。

 

ヒーリングミュージックを聞きながら眠ったり、お風呂にゆったりと浸かりお湯のあたたかさを感じたりするなど、感覚に意識を向けることで癒しを得ることすらできます。

いまはまだ実践していないのですが、アロマオイルなどの嗅覚を意識するものや、観葉植物など視覚にうったえるものなども、今後取り入れていきたいなと考えています。

 

 

実践編:妄想から抜け出す。

「ラベリング」→「マインドフルネス」の実践として、私がもっとも効果を実感していることを紹介します。それは、妄想から抜け出すことです。

著者は「妄想」こそは人間が最も得意で、大好きで、ほぼ一日中絶え間なく繰り広げいている。ナンバーワンの煩悩であると説きます。

妄想とは一体何か、著者は次のように説明します。

 

『たとえば今、目を閉じてみます。目の前に見える暗がりに、何かを思い浮かべてください。今朝食べたものや、テレビで見た映像など、なんでも想像してみてください。

次に、目をぱっちりと開いて、前を見ます。部屋の中や外の景色を、よく見つめて下さい。そして、「ああ、これが見えているという状態(網膜が光を感知している状態、視覚)なのだ」と意識します。

このときさっきまで脳裏に浮かんでいた映像は、存在しませんね。「さっき見ていたものは、妄想である。」「今見ているのは、視覚(光)である」と、はっきり意識してください』

 

いかがでしょうか。何か心あたりがありませんでしょうか。

私は大いにありました。というより、私を苦しめていることの大部分はこの妄想ではなかったかと思うくらいでした。

たとえば、人になにか酷いことを言われたあとに、家に帰って思い出してイライラしてしまう。あるいは、過去にあった嫌な思い出が脳裏をよぎっては、逃げ出したい気持ちになってしまう。もしくは、明日が仕事だと考えては憂鬱な気持ちになる。

これらは全て、眼前に起こっている現在の出来事ではなく、私が脳内に作り出した妄想に他なりません。

(私はこの妄想に、あまりの忌まわしさから「怒りの亡霊」と名付けていました。昼間に1回言われただけのことが、家に帰って何度も考えてしまうことで、あたかも何度も言われているかように追体験してしまうのですから、まるで悪霊に浸かれたような感じがしたものです。)

 

また、日曜日のよるに仕事のことを考えて憂鬱になることを「サザエさんシンドローム」というらしいのですが、これも月曜日のことを妄想するがゆえの反応でありましょう。

 

過去を後悔する蜂はおらず、将来を思い悩む猫もいません。

それなのに、人間だけが過去に対する後悔とか、将来に対する不安に悩まされている。このことが私には不思議でなりませんでした。

 

しかし、ラベリング→マインドフルネスによって、この悪霊がほとんど顔を出さなくなりました。お祓いに成功したというわけです。

「あ、いま妄想した」とラベリングをし、身体の感覚に意識を向けるマインドフルネスを行うこと。

 

 この習慣を身に着けることによって、悪霊を退散させ、いま目の前にあるものに集中する習慣を身につける(というよりは、嫌なことを考える思考回路を衰廃させる)ことができたのだと思います。

 

心は同時に2つのことを考えることができない仕組みになっているため、体の感覚に意識を向けながら、別のことを思い悩むことはできません。

 

マインドフルネスは、心を平穏にし、感覚の喜びを与えてくれる、HSPと非常に相性のよい手法なのです。

 

 

~おわりに~

繰り返しになりますが、今回の「反応しない練習」については、HSP的な繊細さをもつ人にこそぜひ実践してほしいと思いました!

HSP的な気質の人は、<心の反応>の起点となる気づきが多い分、余計に心の反応が起こり、気疲れしてしまうと思います。

しかし、気づきは気づきとしてあるがままに受け入れ、余計な反応だけ起こらないようにすることができれば、よりよい人生を送ることができるのではないでしょうか。

 

 

ご清覧ありがとうございました。

 

 

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