月島雑記帳

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HSPが読む「GIVE&TAKE]

 

 

 

ペンシルベニア大学のアダムグラント教授が執筆された「GIVE&TAKE」という本を読みましたので、簡単にアウトプットをしておきたいと思います。

 

(私はHSP的な気質がありますので、HSP的な立場からの感想となっております。

HSPは、「一般的には共感力が高い」、「他者を思いやる」などの特徴がありますが、この本の中にでてくる「ギバー」とかなり近い概念であるように感じられたため、ほとんど同じ言葉のように使用しています。)

 

有名な本なので、内容をご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この本では人間は大きく3つのタイプに分けることができると書かれています。

 

①「ギバー」と呼ばれる、人に惜しみなく与える人

②「テイカー」と呼ばれる、真っ先に自分の利益を優先させる人

③「マッチャー」と呼ばれる、損得のバランスを考える人

 

 

 ※注意点

 筆者はここでいう「ギバー」や「テイカー」、「マッチャー」などの区分については、主にビジネスの場面を想定しています。

 

 というのは、多くの人は子どもにアドバイスをするような場面ではギバーとなり、就職活動の場面においてはテイカーとなるなど、状況や立場によって要求される振舞い方がある一方で、仕事を中心とした人生における人間関係においては、人がどのような振舞い方をするかに自由な決定権があり、大きな分かれ道となるためです。

(例えば部下が仕事で成果を上げたときに、ギバーであればその部下を褒めて伸ばそうとするでしょうし、テイカーであれば実績を横取りして自分の評価に繋げようとするでしょう)

 

 また、そういった意味から、この本における成功というものは、例えば「芸術家が満足のいく絵を描いた」というものではなく、「多くの報酬を得た」とか「世間に認められた」といった世俗的なものとなっています。

要するに、本書は「心理学の本」ではなく「ビジネス書」だということです。

 

 

 さて、この本の要旨としては、「ギバーであることは他者を幸福にするだけに留まらず、自らをも幸福にし、大きな成功を収める秘訣である」ということでありましょう。

 

 この本の中には、ギバー的な生き方により自己を含む多数の人々の幸福を実現せしめた例や、テイカー的な手法を用いて一時的に成功を収めたものの、その後凋落してしまった物語が多数収録されており、一見するとギバー的な生き方を礼賛するもののようにも思われます。

 

 しかし、HSPたる私が注目したのは、そこではありませんでした。

 筆者は、ギバー的な生き方には落とし穴があり、ギバーは大成功を収めることがあるものの、成功から最も遠い位置にいるのもギバーだと指摘しています。ギバーは自分の成功を犠牲にして、相手の利益を優先するために、割を食ってしまうためです。

 

 たとえばエンジニアリングの分野では、ギバーは他の人の仕事を手伝っているせいで、自分の仕事を終わらせることができず、会社全体でも仕事の評価は最低点をつけられることが多かったそうです。

 また、販売員においては、客にとってなにがベストかを常に気にかけているギバーは、強引に売りつけようとするテイカーやマッチャーと比して、年間売り上げが半分以下だったといいます。

 

 こういったギバーは私たちの身近にも多くいるように感じます。

 その人の良さから仕事を押し付けられるギバー、他者に遠慮しすぎるあまりうだつの上がらないギバー。(これを、便宜的に「搾取ギバー(社会から搾取されるギバー)」と呼びたいと思います。)

 

 さて、この話はHSP界にも当てはまるのではないか、というのが私の意見です。

 HSPは、その感受性の高さから強烈な喜びを感じ取り、善の行いにより社会的な評価を得ることができますが、一方で、その感受性の高さや善を愛する心から、世間の理不尽の餌食となったり、社会の腐敗に打ちひしがれることがあります。

 

 私はある仮説を立てました。

 それは「HSPもギバーと同様に社会的な成功を収めることも可能であり、一方で、搾取ギバーのように使い捨てられてしまうような、いわば二極化の構造となっているのではないか」というものです。

 

 では搾取ギバー(搾取HSP)にならないためにはどうしたらよいのか。

 「GIVE&TAKE」の308ページに答えがありました。
  〈――――つまり、テイカーとつき合うときには、マッチャーになればいいのだ。ただし、最初はギバーでいたほうがよいだろう。………相手が明らかにテイカーとして行動したら、ギバー、マッチャー、テイカーの三タイプを使い分け、ぴったりの戦略をとるのが得策だろう。—―――〉

 

 これは日本の初等教育における「相手によって態度を変えてはいけません」や「みんなと仲良くしないといけません」を、真向から否定するものでありますが、世の中のありふれた不幸を見たときには、アダム教授の言い分が正しいように思います。

 要するに、「人に親切にすることは大切だけど、嫌な人に親切にすると搾取されてしまうのだから、嫌な人が近寄ってきたらそれなりの対応をしてもいいんですよ」ということです。

 

 Twitterを見たときには、このことに踏み切れないばかりに、搾取されているようなツイートが散見されて胸がいたみます。

 ・パワハラ上司がいるのだけど、上司は上司でつらい気持ちもあるだろうし、なにか反論して目を付けられるのも避けたいし、私が我慢していればよいか。

 ・からかってくる友達がいるんだけれど、私が我慢することで全体の和が保たれているのだし、このままでいようかな。

 

 こういうことをしている間に、いつの間にか搾取HSPとなってしまい、HSPの気高い感受性は失われ、低い幸福度の中で過ごさなければならないとは、なんたる不幸でしょう。

 

 最後に、この本では、最も幸福に近いのもまたギバーであると説きます(以下、幸福ギバーと呼ぶ)

 幸福ギバーは、他人の幸福のために働くことから、他者から強い信頼を得ることができ、人間関係にも恵まれ、自分が与えた分だけ幸福のリターンがあります。

 他人の成功を掠め取るようなテイカーとは異なり、幸福ギバーは人生という長距離走の舞台では、長期的な人間関係を築き、大きな成功を収めることができるのです。

 

 HSPも幸福ギバーと同様に、他人の幸福のために働き、他者から強い信頼を得ることができると思います。HSPの皆様に幸あらんことを願っています。